黄色いダイヤモンドと呼ばれる「バナナ」とやらを愛する男がおるそうじゃな。バナナもその男も気になるぞ!

ライター・前田

はい! バナナが好きすぎて、ニックネームは「バナンナ」。我が子にもしっかり英才教育をしてバナナ好きを増殖中のライター・前田美保です。こんなに美味しいお仕事がもらえるなんて! 幸せすぎて黄色くなりそう! ありがとう、清正さ~ん。

なかなか本題に入れない
ユニークなご主人!
バナナより好きなものは……

細工町にある「松田青果」さん。向こうに見えるのは黄色いダイヤモンド!
ライター・前田

うひょー!!! あります、あります!

清正さん

ビックリした! 何があるんじゃ?

ライター・前田

あれが、黄色いダイヤモンド「バナナ」です!
明治時代に日本に入ってきたと言われているので、清正さんははじめてかもしれませんね。

清正さん

ほお、あれが「バナナ」! 一体、何なんじゃ?

専門店なので当たり前ですが、バナナまみれ!
松田さん

あたたちゃ、何ね?

ライター・前田

(ビクッ!)すみません! 取材でお邪魔したライターの前田です。バナナが好きすぎて、この仕事をさせていただくことになりました!

松田さん

ほー、そぎゃんね。なら、試食すんね。

ぽろんっと出されたバナナ。(そのまま!笑)

ライター・前田

え?(名刺も渡してないのに)食べていいんですか! わーい!!!

モグモグモグ

ライター・前田

身がしっかりしていて、味が詰まってる感じ。うんうん、美味しいです!

松田さん

次はこれっ。

(ぽろんっ)

ライター・前田

シュガースポットが入ってる! いっただきま~す。

うっうっうまーーーーーい!!!

ライター・前田

実も柔らかくなって口あたりがまろやか! さっきのよりも甘味が増してます!

清正さん

ほお、食べ物なのか。

松田さん

それで、今日は何の取材だっけ?

ライター・前田

松田さんの取材です!

松田さん

そうかそうか。じゃあ、これを見せてあげよう。

(おもむろに取り出したのは、バナナではなく…)

(ゴソゴソ……)どうだ!

えっ? 戦艦??

「これは、こっち側から、敵が来て(なんちゃらかんちゃら…)」
(何か違う方向に行ってる…バナナの話じゃない)
ライター・前田

松田さん、バナナのお話を……

松田さん

俺は特撮ものが好きで、DVDもいっぱいあって時間がある時に見よるとたい。

引き出しにはビッシリとDVDが!
ライター・前田

えっ? ぶっちゃけ、バナナと特撮、どちらがお好きですか?

松田さん

特撮!

ライター・前田

即答!?

松田さん奥様

もー、そんなこと言ってたら困らすたい。バナナの話をしてあげんね~。(都合により顔出しNGとなっております)

ライター・前田

神! ありがとうございます。

松田さん

そうか、そうか…。なら、バナナの話ばしようかね。

そう言って、壁に掛けられたバナナの写真を指し、花の話、実のなり方、美味しいバナナの選び方などを教えてくださいました。

バナナは多年草で、「バナナの木」は正しい表現ではなく、幹のように見えるのは茎ということ。正確には「バナナの草」という表現になります。こうやってバナナは実をつけるんですね。

って、ん? 
何か違和感が……

いやいや、それ「う●ち」じゃないですか!

どこまでもお茶目な松田さんのお話は、ためになるお話しばかり(の中に、笑いあり)

たまに見せてくださる「ドヤ顔」もチャーミングです

100年続くバナナの熟成加工店!
そこにはフィリピンがあった!

バナナの熟成具合が分かるカラーチャート

バナナは、害虫を防ぐため熟した状態で輸入ができないため、カラーチャートの一番上、緑色の状態で日本に入ってきます。到着したバナナを、松田さんはまず は育ったフィリピンと同じ環境にしたムロ(熟成室)に入れて熟成させていきます。

ムロは全部で16室ありましたが、熊本地震で壊れてしまい、現在は4室を使って熟成しています
フィリピンの環境に合わせて、温度や湿度を調整したムロ。ここで美味しくなっていくんですね!
到着したてのバナナは、緑色でカチカチ。食べても美味しくありません(我慢、我慢)

では、バナナはどうやって熟成するんでしょう?
登場するのが「バナチレン」というバナナ専用の熟成用ガスです。

このガスが室内に充満することで、ムロは酸欠状態に。温度や湿度を管理し、追熟させていきます。

室の制御盤。年季が入っています!

ムロの温度を下げていき、追熟を進ませること約1週間。美味しいバナナの完成です!

松田さん

子どもの頃は、モーター室の上に自分の部屋があったので、寝ていても起きていてもモーターやファンの音が聞こえている状態。それが当たり前すぎて、音や振動がないと眠れなかったとよ。

ライター・前田

生活の一部にバナナがあったんですね。

松田さん

そうね。モーターやファンの音が変わったらすぐに確認して、何かあれば対応せなんけん、バナナ屋になってから35年。2泊以上の旅行には行けないから、家族に先に行かせて、私は1泊だけ合流という感じ。

清正さん

休みよりもバナナ。男前じゃ!

ライター・前田

熟成の際に気をつけていることは、どんなことですか?

松田さん

外気温や室内温、果肉の温度によって状況が変わるけん、基本的なマニュアルはあるけど、天狗になっとったら失敗して大変なことに…。この世界は、極寒と酷暑をそれぞれ2回経験して初めて一人前って言われとるとよ。

ライター・前田

なるほど。

熟成が進んだ状態。きれいな黄色です

突然ですが、どっちが美味しいバナナでしょう!

松田さん

正解は「右」です。
出来るだけ曲がっていないバナナの方が、美味しいバナナです。それと、うちのバナナの特徴はコレ!

パキッッ!!

松田さん

ほら、バナナっ子、食べてみて。

ぐにゃっと曲がるところ、
パキッと折れるバナナは新鮮な証拠。
もちろん、味も美味しい!

バナナを手渡されると、無意識に食べてしまうバナナっ子ことライター・前田。
カメラマンに「ちょっと早いから!」と怒られました(笑)
松田さん

昼ご飯は抜いてきてって言い忘れたけど、大丈夫みたいね。。

ライター・前田

はい! しっかり抜いてきました! 抜いていなくてもバナナは入ります!

清正さん

ちょっとは遠慮しろ…。

松田さん

買った後のポイントとしては、よく、「買って帰ってから美味しく熟成させる方法は?」というのを見かけるけど、うちのバナナは買った日に美味しい状態まで熟成しとるけん、熟成を止める方法をおすすめします。あくまでうちの場合だけんね。

ライター・前田

はい!(買って帰る気満々でメモメモ)

松田さん

1本1本乾いた新聞紙で包み、バナナがなっている向きに合わせて立てて野菜室で保存。そうすると熟成がある程度止まって、2週間は美味しく食べられるとよ。

ライター・前田

試してみます!

昭和元年創業。
地域の歴史と共にあるバナナ専門店のこれから

松田さんのバナナは、同じ通りにある「五福小学校」の給食にも出されています。子ども達は、このバナナを食べ慣れているため、卒業後に食べたバナナにショックを受けることもあるとか。大人になってからも、帰省のたびに買いに来る人もいて、地域に欠かせない一軒なのです。

昭和元年に創業した「松田青果」。当時は「黄色いダイヤモンド」と呼ばれていた。実は、バナナ以外にもキウイやメロン、グレープフルーツの知識も学んでいる松田さん。それぞれ、冷蔵庫などで保管され、こちらも「今食べて美味しい状態」で販売されます。そのため、キウイは1個100円と言った具合で購入でき、しかもその場で食べたい人には、皮をむいて提供してくれるサービスも!

次は…とグレープフルーツをむいてくれる松田さん。さすが元料理人。包丁捌きが見事です!

グレープフルーツ!

羽十メロン!!

ゴールドキウイ!!!

もお、幸せ~~!!!!

またバナナ食べてる…

フルーツ片手に、城下町を散策する人もいるとか! 新しい町の楽しみ方がここにあります♪

松田さん

熊本地震で建物も縮小したけれど、子どもの頃は、「バナナ湯」という銭湯もしていて、今でも「懐かしい」と言って足を運んでくださる方がいます。この先は「でけたしこ」だけどね。

ライター・前田

町に欠かせないお店ですね。松田さんは、まちあるきの案内人もされていると聞きました。この町の魅力はどういったところにありますか?

松田さん

そうね~。ちょっと行ってみるね。(店の向かいを指差して)

着いて行くと、建物の間に細い通路が……。

どんどん進んでいきます。ま、待ってください(焦)
なんと! その先には神社が! あの通路は参道だったのか!
松田さん

ここは「白梅天満宮」。1580年ごろに創建されたと言われる疫病退散の神社です。昔、疫病が流行った時に、地区の男衆で集まって大量の唐辛子とイリコ、醤油、酒で煮込んだ「風神大根」を食べて疫病が治まったと言われていて、今でもその風習は続いとるとよ。

ライター・前田

こんなところに神社があったなんて知らなかったです!

松田さん

そうでしょうね。熊本地震で楼門は倒壊して、参道の両側の建物も被害にあったのでしばらく入れなかったし。鳥居が再建されて、やっと今の状態に。

ライター・前田

再建されたんですね。そして、疫病退散の神社って! まさに、今お参りしないと!

松田さん

きっと、これで大丈夫ばい。

清正さん

信じるものは救われる、じゃな。

「バナナ好き」という共通点で、すっかり意気投合しました

生まれた時からここで暮らし、その風景の一部になっている「松田青果」の松田さん。自信を持って提供する「松田さんのバナナ」は、たくさんのお客さんの心をつかみ、思い出に刻まれています。熊本地震をキッカケに変わってしまった景色の中、褪せることのない「美味しかった思い出」。これからの時代にも大事な「味覚の思い出」を刻むことができる一軒です。

お孫さんの誕生で「じいじ」になった松田さん。プレゼントのこのTシャツがお気に入り
清正さん

晴れると見れば、にわかに雲が出てきて、大雨になることもあります。測りがたきは人の心でございます。

バナナの熟成加工に心血を注いだ35年。モノを話さないバナナを相手に、その時一番良い状況まで熟成し、自信を持って提供できるのは、これまでの経験だけでなく、松田さんのバナナへの愛があるから。経験にあぐらをかくことなく、バナナに向き合う姿は、簡単には真似ができないのです。

(取材・文/前田美保、撮影/今村ゆきこ)

松田さんがオススメする、
近所のラストサムライ

お食事処 たけした

創業48年の町の食堂を切り盛りする2代目の竹下三智哉さん。シャイな一面もあり、写真は外観で。「お客さんにお腹いっぱいになってほしい」と、ボリュームたっぷりでコスパの高いメニューが揃います。

TEL:096-356-0918
住所:熊本市中央区細工町 3-5
営業時間:11:00~14:30 / 17:00~20:30
休み:日曜
席数:20 席
駐車場:3 台

松田青果

問合せ/096-354-5255
営業時間/9:00~18:00
     (祝日は9:00~12:00)
定休日/日曜
住所/熊本市中央区細工町3-38
アクセス/熊本市電A系統
呉服町駅徒歩4分