なかなか本題に入れない
ユニークなご主人!
バナナより好きなものは……
うひょー!!! あります、あります!
ビックリした! 何があるんじゃ?
あれが、黄色いダイヤモンド「バナナ」です!
明治時代に日本に入ってきたと言われているので、清正さんははじめてかもしれませんね。
ほお、あれが「バナナ」! 一体、何なんじゃ?
あたたちゃ、何ね?
(ビクッ!)すみません! 取材でお邪魔したライターの前田です。バナナが好きすぎて、この仕事をさせていただくことになりました!
ほー、そぎゃんね。なら、試食すんね。
ぽろんっと出されたバナナ。(そのまま!笑)
え?(名刺も渡してないのに)食べていいんですか! わーい!!!
モグモグモグ
身がしっかりしていて、味が詰まってる感じ。うんうん、美味しいです!
次はこれっ。
(ぽろんっ)
シュガースポットが入ってる! いっただきま~す。
うっうっうまーーーーーい!!!
実も柔らかくなって口あたりがまろやか! さっきのよりも甘味が増してます!
ほお、食べ物なのか。
それで、今日は何の取材だっけ?
松田さんの取材です!
そうかそうか。じゃあ、これを見せてあげよう。
(おもむろに取り出したのは、バナナではなく…)
(ゴソゴソ……)どうだ!
えっ? 戦艦??
松田さん、バナナのお話を……
俺は特撮ものが好きで、DVDもいっぱいあって時間がある時に見よるとたい。
えっ? ぶっちゃけ、バナナと特撮、どちらがお好きですか?
特撮!
即答!?
もー、そんなこと言ってたら困らすたい。バナナの話をしてあげんね~。(都合により顔出しNGとなっております)
神! ありがとうございます。
そうか、そうか…。なら、バナナの話ばしようかね。
そう言って、壁に掛けられたバナナの写真を指し、花の話、実のなり方、美味しいバナナの選び方などを教えてくださいました。
バナナは多年草で、「バナナの木」は正しい表現ではなく、幹のように見えるのは茎ということ。正確には「バナナの草」という表現になります。こうやってバナナは実をつけるんですね。
って、ん?
何か違和感が……
いやいや、それ「う●ち」じゃないですか!
どこまでもお茶目な松田さんのお話は、ためになるお話しばかり(の中に、笑いあり)
100年続くバナナの熟成加工店!
そこにはフィリピンがあった!
バナナは、害虫を防ぐため熟した状態で輸入ができないため、カラーチャートの一番上、緑色の状態で日本に入ってきます。到着したバナナを、松田さんはまず は育ったフィリピンと同じ環境にしたムロ(熟成室)に入れて熟成させていきます。
では、バナナはどうやって熟成するんでしょう?
登場するのが「バナチレン」というバナナ専用の熟成用ガスです。
このガスが室内に充満することで、ムロは酸欠状態に。温度や湿度を管理し、追熟させていきます。
ムロの温度を下げていき、追熟を進ませること約1週間。美味しいバナナの完成です!
子どもの頃は、モーター室の上に自分の部屋があったので、寝ていても起きていてもモーターやファンの音が聞こえている状態。それが当たり前すぎて、音や振動がないと眠れなかったとよ。
生活の一部にバナナがあったんですね。
そうね。モーターやファンの音が変わったらすぐに確認して、何かあれば対応せなんけん、バナナ屋になってから35年。2泊以上の旅行には行けないから、家族に先に行かせて、私は1泊だけ合流という感じ。
休みよりもバナナ。男前じゃ!
熟成の際に気をつけていることは、どんなことですか?
外気温や室内温、果肉の温度によって状況が変わるけん、基本的なマニュアルはあるけど、天狗になっとったら失敗して大変なことに…。この世界は、極寒と酷暑をそれぞれ2回経験して初めて一人前って言われとるとよ。
なるほど。
突然ですが、どっちが美味しいバナナでしょう!
正解は「右」です。
出来るだけ曲がっていないバナナの方が、美味しいバナナです。それと、うちのバナナの特徴はコレ!
パキッッ!!
ほら、バナナっ子、食べてみて。
ぐにゃっと曲がるところ、
パキッと折れるバナナは新鮮な証拠。
もちろん、味も美味しい!
昼ご飯は抜いてきてって言い忘れたけど、大丈夫みたいね。。
はい! しっかり抜いてきました! 抜いていなくてもバナナは入ります!
ちょっとは遠慮しろ…。
買った後のポイントとしては、よく、「買って帰ってから美味しく熟成させる方法は?」というのを見かけるけど、うちのバナナは買った日に美味しい状態まで熟成しとるけん、熟成を止める方法をおすすめします。あくまでうちの場合だけんね。
はい!(買って帰る気満々でメモメモ)
1本1本乾いた新聞紙で包み、バナナがなっている向きに合わせて立てて野菜室で保存。そうすると熟成がある程度止まって、2週間は美味しく食べられるとよ。
試してみます!
昭和元年創業。
地域の歴史と共にあるバナナ専門店のこれから
松田さんのバナナは、同じ通りにある「五福小学校」の給食にも出されています。子ども達は、このバナナを食べ慣れているため、卒業後に食べたバナナにショックを受けることもあるとか。大人になってからも、帰省のたびに買いに来る人もいて、地域に欠かせない一軒なのです。
昭和元年に創業した「松田青果」。当時は「黄色いダイヤモンド」と呼ばれていた。実は、バナナ以外にもキウイやメロン、グレープフルーツの知識も学んでいる松田さん。それぞれ、冷蔵庫などで保管され、こちらも「今食べて美味しい状態」で販売されます。そのため、キウイは1個100円と言った具合で購入でき、しかもその場で食べたい人には、皮をむいて提供してくれるサービスも!
グレープフルーツ!
羽十メロン!!
ゴールドキウイ!!!
もお、幸せ~~!!!!
フルーツ片手に、城下町を散策する人もいるとか! 新しい町の楽しみ方がここにあります♪
熊本地震で建物も縮小したけれど、子どもの頃は、「バナナ湯」という銭湯もしていて、今でも「懐かしい」と言って足を運んでくださる方がいます。この先は「でけたしこ」だけどね。
町に欠かせないお店ですね。松田さんは、まちあるきの案内人もされていると聞きました。この町の魅力はどういったところにありますか?
そうね~。ちょっと行ってみるね。(店の向かいを指差して)
着いて行くと、建物の間に細い通路が……。
ここは「白梅天満宮」。1580年ごろに創建されたと言われる疫病退散の神社です。昔、疫病が流行った時に、地区の男衆で集まって大量の唐辛子とイリコ、醤油、酒で煮込んだ「風神大根」を食べて疫病が治まったと言われていて、今でもその風習は続いとるとよ。
こんなところに神社があったなんて知らなかったです!
そうでしょうね。熊本地震で楼門は倒壊して、参道の両側の建物も被害にあったのでしばらく入れなかったし。鳥居が再建されて、やっと今の状態に。
再建されたんですね。そして、疫病退散の神社って! まさに、今お参りしないと!
きっと、これで大丈夫ばい。
信じるものは救われる、じゃな。
生まれた時からここで暮らし、その風景の一部になっている「松田青果」の松田さん。自信を持って提供する「松田さんのバナナ」は、たくさんのお客さんの心をつかみ、思い出に刻まれています。熊本地震をキッカケに変わってしまった景色の中、褪せることのない「美味しかった思い出」。これからの時代にも大事な「味覚の思い出」を刻むことができる一軒です。
晴れると見れば、にわかに雲が出てきて、大雨になることもあります。測りがたきは人の心でございます。
バナナの熟成加工に心血を注いだ35年。モノを話さないバナナを相手に、その時一番良い状況まで熟成し、自信を持って提供できるのは、これまでの経験だけでなく、松田さんのバナナへの愛があるから。経験にあぐらをかくことなく、バナナに向き合う姿は、簡単には真似ができないのです。
(取材・文/前田美保、撮影/今村ゆきこ)
松田さんがオススメする、
近所のラストサムライ
- お食事処 たけした
-
創業48年の町の食堂を切り盛りする2代目の竹下三智哉さん。シャイな一面もあり、写真は外観で。「お客さんにお腹いっぱいになってほしい」と、ボリュームたっぷりでコスパの高いメニューが揃います。
TEL:096-356-0918
住所:熊本市中央区細工町 3-5
営業時間:11:00~14:30 / 17:00~20:30
休み:日曜
席数:20 席
駐車場:3 台
松田青果
問合せ/096-354-5255
営業時間/9:00~18:00
(祝日は9:00~12:00)
定休日/日曜
住所/熊本市中央区細工町3-38
アクセス/熊本市電A系統
呉服町駅徒歩4分
はい! バナナが好きすぎて、ニックネームは「バナンナ」。我が子にもしっかり英才教育をしてバナナ好きを増殖中のライター・前田美保です。こんなに美味しいお仕事がもらえるなんて! 幸せすぎて黄色くなりそう! ありがとう、清正さ~ん。