水前寺に、細川家ゆかりの庭園と神社があるそうじゃのぉ。歴史と文化を継承し続ける3人のサムライを調べて参れ!

ライター・平野

こんにちは。実家の本籍地は水前寺(住んだことはありません!)、結婚式は水前寺にある旅館で挙げた、ライター・平野淑湖です。そういえば、初めてサインをもらった芸能人は、水前寺清子さんだったな~。何かと縁のある水前寺へ、行って参ります!

殿様が愛した美しい景観を、
現代に生きる私たちも拝める奇跡!

熊本城から車で10分ほどの場所にある「水前寺成趣園」
ライター・平野

清正さんからのミッションを遂行すべく、訪れたのは「水前寺成趣園」。園内にある出水神社の岩田宮司、成趣園に隣接する「玄宅寺」の寺族であり地域での活動をされている永野さん、参道商店街の会長を務める北原さんの御三方に、ぜいたくにも園内を案内してもらいました!

久しぶりの「水前寺成趣園」、いってきま~す!

いらっしゃーい。

写真左から、水前寺参道商店会会長の北原秀敏さん、出水神社宮司の岩田徹さん、
水前寺活性化プロジェクトチーム代表の永野陽子さん
清正さん

水前寺を守る御三家か⁉

ライター・平野

(それに近いかも…ドキドキ)熊本地震の際は大変でしたね。

岩田宮司

熊本地震発災直後は池の水が枯れてしまって…。自然の力は不思議で、約1カ月後に復活し、大きな話題になりました。

永野さん

全国から集まったボランティアさんの貢献も大きかったですね。

倒壊した参道の鳥居は、園内で再利用されているので見つけてみて

それでは、水前寺ツアーのはじまりです!

岩田宮司

では、出水神社から。
西南戦争の翌年、明治11年に肥後細川家初代細川藤孝(幽斎)公ほか3柱を主祭神とし、創建されました。歴代の細川家当主を祀っていることもあり、今回再建した鳥居の扁額(へんがく)の書を、細川護熙さんに手掛けてもらったんですよ。

ライター・平野

まさに、細川家ゆかりの神社ですね。

岩田宮司

再建された鳥居には、神社が所有する阿蘇郡西原村の水源涵養林の中で育った南郷檜(なんごうひ)を活用しています。

ライター・平野

立派です! ぜひ今のピカピカできれいな鳥居を、たくさんの人に見に来てもらいたいですね。

清正さん

ほお、それはわしも見に行かねば!

成趣園に入り左へ進むと、真新しい鳥居が出迎えてくれました。
熊本地震で倒壊した出水神社社殿前の鳥居が、2020年8月に再建。
鳥居に掲げられた扁額の文字は、細川家第18代当主で元総理大臣の細川護熙さんが書かれたそうです。
ご利益をいただけそうなので、触ってみました。肌触りが気持ち良すぎ!
永野さん

稲荷神社では、結婚式の前撮りをする方が多いの。

ライター・平野

インスタスポットですね! 私も撮ってみたい。清正さん、シャッターお願いしまーす。

清正さん

なんじゃと⁉(しぶしぶ、撮る…)

水前寺成趣園の北東にあたる場所に建つ稲荷神社。
こんな感じかな~と撮影。良い感じ♪
ライター・平野

わぁ! この建物は「古今伝授の間」ですね。
ここも写真映えしますね!

細川幽斎公が古今和歌集の解釈の奥義を後陽成天皇の弟、桂宮智仁親王に伝授した「古今伝授の間」。
大正元(1912)年に水前寺成趣園に移築され復元。400年の歴史を持つ建物です
岩田宮司

「古今伝授の間」では、抹茶とお菓子をいただけるんです。いかがですか?

ライター・平野

(遠慮なく!)いっただきまーす♪
んー、ほろ苦っ! お菓子は優しい甘さ!

清正さん

花より団子とは、この事…。

お殿様気分で一服♪
「古今伝授の間」からの景色。水面に映る空や庭園の緑が美しい!
松や桜、梅の木が530本ほど植わっているため四季の彩りも楽しめます
成趣園を語るみなさんの笑顔から、成趣園への愛を感じます
ライター・平野

北原さんと永野さんは、水前寺地域を盛り上げる「水前寺活性化プロジェクトチーム」でもいらっしゃいますよね。

北原さん

そうです。平成22年から開催している“水前寺まつり”をきっかけに、水前寺成趣園と自治会、近隣商店街が集まってイベントをすることが増えました。プロジェクトチームを結成したのは平成24年3月。毎年2・3月には、竹灯籠で水前寺成趣園や水前寺界隈を和のあかりで灯したり、着物月間(2月)や浴衣月間(8月)にはそれぞれ着物・浴衣のレンタルや着付けなどをしたりして、多くのお客さんに来てもらいました。

永野さん

最近では、「水前寺かいわい100ヶ所めぐり」というパンフレットを作って、水前寺成趣園や江津湖界隈の歴史や文化を分かりやすくして、地域の魅力を知ってもらう活動もしています。地域を語れる子どもや大人が増えてほしいの。

ライター・平野

100ヶ所も魅力的なスポットがあるというのもすごいことですね!

パンフレットは、「水前寺成趣園」入り口で手に入ります。成趣園スタッフにお尋ねを!
北原さん

園内では、ひご野菜のひとつ “水前寺菜”を育てているんですよ。

表は濃い緑、裏は紫色をしている水前寺菜。
永野さん

“水前寺菜”は正式な植物名なんです。いろんなところで育てられていて、石川県の金沢市周辺では「金時草(キンジソウ)」とも呼ばれているの。江戸時代には、水前寺の豊富な湧き水を利用して作られて、細川家の茶席で茶花としても利用されていたそう。せっかくなら、学名が付いたここ水前寺で、ちゃんと水前寺菜を作りたいなって。

ライター・平野

メード・イン・水前寺の水前寺菜! そういえば、参道のプランターにも植わっていたような……。

参道で栽培されている水前寺菜。食べ歩きもどうぞ!(うそですっ!)
北原さん

参道商店街で苗を販売しているんです。 手軽に育てられますよ。

永野さん

“目指しているのは、地元の水前寺のどの家庭でも、水前寺菜が育てられていること。私は、生のままサラダにして食べています。ポリフェノールも豊富で、ストレスを低減するGABAや、免疫増強効果のあるビタミンAが豊富に含まれているんですよ。地域では3年ほど前から水前寺菜の料理教室を続けています。和洋中、多彩ですよ。

ライター・平野

わぁ~~~! どれも今の私に必要な栄養素! た、食べたいです!!

清正さん

そんなにストレスがたまっとるのか。悪いな~。

福島から贈られた八重桜「はるか」。ともに大地震で被害を受けた福島・東北・熊本の復興を祈念し、平成29年3月に植樹。貴重な桜のため、通常1都道府県あたり1本しか贈れないところ、特別に3本寄贈されたとか。次に来たら、どのくらい大きくなっているか楽しみ♪

スイちゃ~ん! フクちゃ~ん!

ライター・平野

ど、どうしたんですか? お気に入りの鯉でもいるんですか?

永野さん

ふふふ。ここにはね、見ると幸せになれるっていう白いスッポンが2匹いるのよ。昔から白い生き物は「神の使い」と言われているしね。大きい方がスイちゃんで、小さい方がフクちゃんっていうの。

スイちゃ~~ん! フクちゃ~~ん! 出ておいで~~~! おーーーい!

ん!?  あ、あれは……!! 
黒色のスッポン!!! ざ、残念…

「呼んだ~?」と言っているようにゆる~っと登場した黒いすっぽん君(名前はないらしい)
岩田宮司

おぉ~スッポンが出来てくれましたね。(白色じゃないけど)よかったですね。

ライター・平野

(岩田宮司、お優しい…)また成趣園に来た時に、必ず見つけます! 見つけるまで、帰りません!!

清正さん

必死じゃな~。

細川文化を継承し伝えるために
伝え続けた「成趣園」への想い

池と言っても湧水! さすが「水の都・熊本」です
ライター・平野

お殿様がいらっしゃった時代にタイムスリップをしたような気持ちになりました。

岩田宮司

そうでしょう。歴代の細川家当主が築いてきた文化は、どれも美しいものばかり。例えば、武士のたしなみとして栽培が始まったとされる肥後六花は、門外不出として現在に伝えられています。園内では、肥後椿、肥後芍薬、肥後花菖蒲、肥後山茶花、肥後菊の栽培をしていますし、栽培が難しい肥後朝顔は、花の時期には特別展示をして、1年を通し、肥後六花全てを園内でご覧いただけるようにしています。

ライター・平野

文化芸能が詰まった場所ですね。ちなみに、以前は「水前寺公園」と呼んでいたんですが、正式名称は「水前寺成趣園」なんですね。

岩田宮司

昔は、動物園が併設されていたこともあり、通称「水前寺公園」として親しまれていました。

ライター・平野

聞いた話によると、庭園をバックにアシカが泳いでいたとか!

清正さん

庭園とアシカ⁉ シュールじゃな……。

岩田宮司

20年ほど前に出水神社の職に就いた時から、正式名称の周知の低さに気づいて、意識的に「水前寺成趣園」「成趣園」と口に出して言うようにしたんです。最初はみんな「何?」という感じでした。ここが細川家ゆかりの歴史ある場所であること、優美な回遊式庭園であることから、いわゆる他の公園との差別化をはかりたかったんです。

ライター・平野

なるほど。大河ドラマに登場している細川忠興公の妻・ガラシャ夫人をデザインした御朱印帳が登場したり、さまざまな話題もあって、若い世代の参拝客も増えそうですね。

細川家とガラシャ夫人のことをまとめた冊子「garasha」の表紙は、「古今伝授の間」で撮影。
パンフレットの請求は、HP「熊本市観光ガイド」で検索して申し込めます。
岩田宮司

水前寺といえば細川家というくらいに、このイメージをアピールして、多くの方に足を運んでもらいたいですね。

明治11年に創建され、細川藤孝公、忠興光、忠利公、重賢公を主祭神として、歴代藩主やガラシャ夫人が祀られています
3カ所建てられている夏目漱石の句碑も見どころ。中でも出水神社の手水舎横の句碑に刻まれた「しめ縄や春の水湧く水前寺」の文字は、歪んでるな~っと思っていたら、漱石の直筆!

見よ! 細川ガラシャ夫人をデザインした御朱印帳です。

コロナウイルス感染症の影響で、現在、持ち込みの御朱印帳への記入を控えているとのことですが、こちらで購入したものには書き込んでいただけます。
私も早速、書いていただくことにしました。

見ていて惚れ惚れします。

まずは熊本を中心に、神社巡りと御朱印集めを楽しみま~す♪

ライター・平野

お話を伺っていると、岩田宮司の出水神社・水前寺成趣園を広く伝えたいという熱い思いが伝わってきました。何かキッカケでも?

岩田宮司

まあ、子どもの頃、遊びに来ていた思い出はありますが、そんなに深い関係では。全く違う職からの転職ですし…。

ライター・平野

前職、気になる!

岩田宮司

そこは、まあ、良いでしょう。

ライター・平野

こちらに勤めはじめてから、歴史など学んでいかれたんですか?

岩田宮司

そうですね。毎朝、園内をみんなで掃除をして、今日も美しいな…って。

ライター・平野

すっかり魅力にハマっていかれたんですね。

岩田宮司

そういうことです。大きな価値のある場所なので。

清正さん

その思いが代々、受け継がれておるのじゃな。

精力的な活動の原動力は
「水前寺」という場所へのご恩返し

ライター・平野

お、お美しい! 

清正さん

わしの嫁に……。

ライター・平野

いやいや、ダメでしょう。あ、失礼しました(苦笑)。
永野さんは玄宅寺の寺族と伺いました。

永野さん

ええ。玄宅寺に嫁いで48年になります。もともとこのお寺は、豊前(大分県中津市耶馬渓町)の羅漢寺にいた玄宅和尚が、細川忠利公に呼ばれて熊本に来た際、成趣園の中に寺を与えられたことから始まるんです。その時の寺の名前が「水前寺」だったんです。

ライター・平野

「水前寺」は、その名の通り、お寺の名前から来ていたんですね!

永野さん

現在の場所に移ってから「玄宅寺」と改めましたが、玄宅寺でありながら「水前寺」を語っていたんです。玄宅和尚は、病弱だった忠利公に「からし蓮根」を勧めた人物として知られている方なんです。ここには、忠利公の時代に殉死された方のお墓もありますし、細川家とゆかりのある場所として、私もとても大切に思っています。

ライター・平野

「水前寺活性化プロジェクトチーム」の代表としてさまざまな活動をされていらっしゃるのも、そういった思いからですか?

永野さん

60歳の時に自治会長をさせてもらったんです。その頃「水前寺はもうダメね」「さびれた」なんて声を聞き、とても悲しくてね。だから、町おこしを始めました。それまで接点のなかった出水神社さんとも交流が始まったんです。

ライター・平野

水前寺まつりがキッカケで、地域での活動も動き出したんですね。

永野さん

水前寺にはすてきな場所がたくさんあるし、歴史も深い。これまでここで生かしてもらったから、少しでも御礼奉公して人生終わろうと思ってね(笑)。いろんなことをさせてもらっています。

永野さんがとても大好きな場所として、取材中度々名前を挙げていた「藻器堀川」。

水前寺成趣園に隣接しながらも、電車通りや住宅地にもほど近い場所ながら、川の水が澄んでいて驚き! 毎年夏になると、地域住民で清掃したり水神様にお祈りしたりして地域で川を守っているそうです。

水前寺の魅力を発信し続ける
イベントの仕掛け人

世界を見てきた北原さんがセレクトした雑貨がズラリ。
ライター・平野

北原さんのお店「チェルシー」は、目に入るものすべてが気になるものばかり。外国の雑貨は、買い付けに行かれたりしているんですか?

北原さん

そうだね。35年前くらいから輸入雑貨を扱っていて直接買い付けにも行っていました。ヨーロパやアメリカなど、海外に13年住んでいたこともあるし、50カ国以上の国を見てきましたよ。

ライター・平野

そんなにたくさんの国々に! だからこそ多彩なイベントを先導されて来られたんですね。

北原さん

格式ある水前寺成趣園の参道だから、以前はあまり大きなことはできなくてね。でも自分は、ここを盛り上げるにはイベントするしかないと思っていたから、手探りしながら少しずつ動いていて。歴史もある土地柄だから、いろんな考えの方がいる。でも、「やれる人はやる、やれない人は口を出すな!」というスタンスでやっていますよ。

ライター・平野

頼もしいお言葉!

北原さん

もうね、「イベント屋」ですよ(笑)。今はコロナウイルスの影響で難しい面もあるけど、第1・2日曜日には、骨董品やハンドメードのショップが並ぶマルシェを開催しています。ここに特化したイベントを少しずつ増やして、以前のように、たくさんの観光客の方にも足を運んでもらいたいですね。

「こいつとは一番付き合いが長いね~」と肩を組んで、ハイチーズ♪

北原さんにとって「水前寺成趣園」は、環境的にも歴史的背景を見ても日本のどこにもない場所だそう。だからこそ、成趣園の入り口であるこの場所で、観光客をあたたかく出迎え、水前寺の魅力を伝え続けている。

清正さん

一人一人の突出した働きは、
武者の中にははいらぬ

水前寺成趣園・出水神社で細川家の文化や歴史を継承し発信している岩田宮司、地域の人と人をつなぎながら、たくさんの応援者に囲まれている永野さん、参道商店街の賑わいを出すために、コロナ禍でもできる限りのイベントを開催し続けている北原さん。御三方、それぞれに立場や役割があり、それらを果たすことで「水前寺」の歴史や魅力が守られていると感じました。そのことが自然と、そして確実に、多くの市民や観光客へと水前寺の魅力として伝わっているのです。

(取材・文/平野淑湖、撮影/今村ゆきこ)

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陶芸家・細川護光さん

細川家19代当主。「出水神社」の責任役員の一人であり、プライベートでも度々、成趣園に足を運ぶ護光さん。陶芸家として、「泰勝寺」(熊本)と湯河原(神奈川)を拠点に作陶を行っています。2021年春に予定されている「泰勝寺」での個展の詳細はHPにて。

お問合せ 泰勝寺
mail : taishoji.event@gmail.com
住所:熊本市中央区黒髪 4-610
※イベント情報などは「泰勝寺」HP をご確認ください
(https://www.taishoji.com)

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お菓子のおくやま

かつては水前寺界隈の家々で作られていたという甘味「水前寺もち」を70年以上守り続ける、3代目店主・奥山千恵子さん。県産の餅米と手作りあんこの優しい味わいは奥山さんの笑顔のよう。水前寺菜の苗も販売しています(4~10月)。

TEL:096-383-0669
住所:熊本市中央区水前寺公園 5-25
営業時間:8:00~17:00
休み:不定
席数:なし
駐車場:なし

水前寺成趣園・出水神社

お問合せ/096-383-0074
開園時間/8:30~17:00
(入園は16:30まで)※北門は9:30~16:00
定休日/なし
住所/熊本市中央区水前寺公園8-1
アクセス/熊本市電A系統
水前寺公園電停より徒歩3分

玄宅寺

お問合せ/096-383-5007
10:00~16:00に拝観することもできます。
(お寺を使用中はお断りする場合もあります)
定休日/なし
住所/熊本市中央区水前寺公園6-24
アクセス/熊本市電A系統
水前寺公園電停より徒歩5分

チェルシー

お問合せ/096-381-8882
営業時間/9:00~17:00
定休日/なし
住所/熊本市中央区水前寺公園5-21
アクセス/熊本市電A系統
水前寺公園電停より徒歩3分