肥後の歴史と文化、そして、市民が集う「街」を守る若者。まさに、剣豪・宮本武蔵のような二刀流ではないのか!?

ライター・下田

熊本と愛知を行き来し、昼はライター、夜はDJと、私も立派な二刀流!(無理矢理、笑)な下田宣代です。指令を聞いただけで、なんだかスゴそうな人なんで、いつものノリでいいのか、お利口さんで行った方がいいのか、悩みながらも……ああ、考えてもしょうがない! いってきます!(どうとでもなれ〜) 

居合を街なかで指導する剣豪・宮本武蔵に縁がある令和のサムライ!?

このビルです。ひっそり感が緊張を高めます

熊本城近く、上通・下通アーケードを中心とした中心市街地を「街」と呼ぶのは、熊本七不思議のひとつ(たぶん)。そして、その街のなかを、「街なか」と呼びます。これ覚えておくと、熊本人と仲良くなれるはずです(…たぶん)。

早速ですが、武蔵小路にある「武蔵ビル」に居合の道場があるという情報をキャッチし、お邪魔してみる事に。街なかに道場があるなんて、想像もつきません。ましてや「居合」って…ん?居合、居合、……居合って、何だろう…分からない。しまった、事前リサーチする時間がない! 武道だよね、「知らない」なんて言ったら投げ飛ばされるのかもしれないな。

清正さん

それは柔道だろう…。むしろ、投げ飛ばされてこい。

落宮本武蔵とゆかりがあるためでしょうか、地名をはじめ、
ビルなどに「武蔵」と入っていることが多いのも、熊本あるある

第一ヒント発見!

「居合道」と書かれたチラシ

1階ロビーでチラシを発見。刀を持っている様子からすると、剣道や殺陣のようなものでしょうか。実は私、剣道経験者なんです。ふっふっふっふ。少し自信がついてきたぞ。(ヒントが第一でおわってるのは、お気になさらず)

し、失礼します……

強い上に恐い人だったらどうしよう

街なかで居合を教える、ラストサムライに会いに来たんですけど…

ようこそ、お待ちしていましたよ。

モデルさんみたいにかっこいい松永哲典さん
ライター・下田

えっ? 若い、かっこいい! あっ、着物着てる。なんか武道っぽいぞ。えっと、……は、は、はじめまして。(少々、拍子抜けで、逆に戸惑う)

松永さん

だ、大丈夫ですか?

ライター・下田

すみません! 実は「居合」のことを良く知らないまま来てしまって、どうしようと思っていたところ、松永さんがかっこ良すぎて、パニックになって…。

清正さん

だから、落ち着かんか。

この後、発覚するがスゴい家系の方でした!
松永さん

そんなにビビらないでください。詳しく知らない方は多いですよ。合気道と勘違いされたり、戦う武道だと思われたり…。居合は、刀を使って「己」を磨く武道です。人と対戦したり、勝ち負けを競うということはないので、言い方は悪いですが、派手で分かりやすさのある武道とは違い、地味な武道になります。

ライター・下田

ご自分で地味って言った。

清正さん

分かりやすく言ってくれておるのじゃ。こやつ、気遣いが出来るな。

松永さん

「相手と戦う、相手を負かす」ではなく、向き合うのは自分。そこを突き詰めていく武道になります。だからこそ、鍛錬しながら形を磨いていく。そういう世界です。そうですね、もっと極端に言うと、人から評価されなくてもいいんです。客観的に見ることができない、自分という存在と向き合うことがこの武道の本質なんです。

ライター・下田

さらっとおっしゃるけど、深い…。

松永さん

30代の私は、この世界では初心者も同然。60代で若造ですからね。

ライター・下田

自分と向き合う…精神論の世界っぽいな。私は自分と向き合いきれず、この部屋に飾ってあるアレとか、コレとかが、さっきから気になって仕方ないのです。

横目に見えているアレが気になる…

そのアレが、コレ!

ライター・下田

教科書とかで見た事ある、あの人ですよね?

松永さん

ええ、剣豪・宮本武蔵です。細川忠利公が熊本に招き、有名な「五輪書」が完成したと言われています。

ライター・下田

武道を志す人は、やっぱり憧れる存在なんですね。(アイドルのポスターを貼るようなものかな♪)

松永さん

元をたどれば、師ですね。宮本武蔵が確立した「二天一流」を、曾祖父の時代から松永家が継承しているので。

ライター・下田

また、そんなにさらっと。…ええー!スゴい事じゃないですか!

清正さん

独特の空気感を持つ若者じゃな。

松永さん

系譜を見ながらご説明すると、最初に宮本武蔵の名があって、辿っていくと、これが私です。

宮本武蔵から始まり…

先端が、第18代・松永哲典さん!

松永さん

宮本武蔵の「二天一流」という、多分みなさんもご存知の、二刀流の形です。曾祖父・松永展幸が、第15代宗家として、後進を指導し、全日本居合道連盟に大きく貢献したと聞いています。

江戸時代の剣豪・宮本武蔵と、
令和のラストサムライ・
松永哲典さんの共演!

これが時代を超えて受け継がれる「二天一流」
ライター・下田

やっぱりかっこいい! 分かった! 松永さんの写真をカレンダーにして売り出しましょう。そしたら、もっと沢山の人に広がりますよ!

松永さん

恥ずかしいのでいいです(笑)。

ライター・下田

意外と照れ屋だ。

見よ! 第17代目・松永和典さん!

松永さんのお父さんです。映画のワンシーンみたい!
親子ツーショット。親子で出演した演舞での写真です
清正さん

おお、凛々しい。わしの家臣にしたいぞ。

ライター・下田

時代違うからな〜。残念!

街で生きてきたからこそ
街に恩返しがしたい。
それが町づくりの原動力

町づくり活動中の松永さん。私服だと、また違った印象です

二刀流の継承者として、松永さん自身も後進の指導や、イベントでの演舞など周知活動を行っています。一方、街なかで暮らしてきたからこそ、この中心市街地は庭のようなもの。大型ショッピングモールが次々とオープンし、街は昔ほどの活気がなくなって来ているのが、正直なところ…。松永さんも、その危機感を感じていたと言います。さらに追い打ちのように起きた熊本地震。観光客も激減し、閑散としたアーケードを見ると、涙が出そうになり、仲間たちと「どうにかしないと…」という気持ちになったのです。そんな折、支援の呼びかけをもらい、松永さんを突き動かす両輪のひとつ「町づくり」の活動が本格的にスタートします。

松永さん

私が…というより、仲間と一緒にです。人前に立つ事とか、話す事とか苦手なので、先輩をはじめ、同年代の仲間など、みんなに支えられながらやっています。

ライター・下田

それが、「くまもと・まち魅力向上協議会」の事なんですね。会長をされていますもんね。

松永さん

…鍛錬です。

ライター・下田

しゅ、修業かっ(笑)。今入ってきたタレコミ情報によると、街の商店の先輩方に、相当かわいがられているようですね。夜の街でのノミュニケーションなども盛んなようで。学校生活ではなく、こうやって大人になって出来たつながりって、とても大事ですね。

松永さん

なんとでん言われてそうですね(笑)。はい、もともと「街を盛り上げたい」と活動している先輩方がいらっしゃったので、最初はそのお手伝いをしていたんです。支援のお話をいただいたことをキッカケに協議会が立ち上がり、私たち若手が中心でやることを、逆に先輩方がサポートしてくれて。会長という肩書きですが、表に立って牽引するというより、みんなの間に入って、アイデアやコミュニケーションを繋げている役割だと思っています。

清正さん

令和の時代も、こういったものたちがいるから安心じゃな。

伝統を守りながら、新発想で街を盛り上げる松永さん
体の不自由な人たちが訪れやすい場所になれば、これまで来れなかった
人たちが来てくれて街が盛り上がるはず!という発想から、
道路の段差などのチェックを行い、さまざまな交流イベントを開催
実は、ビルの屋上がデットスペースというマイナスを利活用するために
生まれた「くまもと空中図書館"まちぴちゅ"」

居合の世界を体験!
剣道経験者・下田の成果は!?

イチから、いやいやゼロから教えてくださる優しい松永さん

まずは、第18代・松永哲典さんによる
演舞をご覧ください(アナウンス風…)

静まる道場…

スッ

ヒュウ…

シーーーーン。

掛け声はなく、聞こえてくるのは。衣摺れと刀を振る音だけ。刀を振るたびに「ヒュウ」という音が、しんと静まる道場に響きます。(あ〜緊張した!)

さ、次は下田さんの番ですよ

素晴らしい演武に見とれ、ぼおっとしていた私…

っ!?

不安…不安しかない…

これは真剣。ガチなやつです

体験で使うのはもちろん模造刀です(笑)

ズボンのベルトに刀を差して…
(結構、ずっしりします)

チャンバラごっこしてた時やってたな…

刀を鞘(さや)から抜く、ん…抜く。
抜けない〜〜〜〜

先生〜、抜けませんよ〜。手が短いからですか〜
松永さん

初めての方はだいたい抜けないもんです。体のつくり、腰の動かし方、刀の特性などを考えて、こんな感じで…

「手の動きだけでは抜けませんよ〜」
(本当に丁寧に教えてくださるな、感謝) なるほど、体ってこう動くんだ。お侍さんはスゴいな…

今度は体の動きを意識して見てみてください。
こんな感じです。

スゴいー!
パチパチパチ!!!!!!!!

 

いやぁ〜照れますね(笑)

照れる松永さん。かわいい…

はい、やってみましょうか

あ、そうだった…
体のつくりを意識して、腰を開いて…

とりゃ〜! どうにか抜けた〜!!

江戸時代に生きてたら、死んでたな(涙)

体、心と向き合いながら自己を研ぎ澄ます…

あ、手が触れてます(ドキドキ)←はい、アウト!
清正さん

邪念ばかりじゃな…。

松永さん

(気にしていない様子で…)刀を振るときは、剣先の位置、軌道を見ます。静止の構えから刀を動かし、どこで止めるかという動作ですね。もちろんそこには、精神性も大変重要です。

居合道…、深すぎる…
清正さん

武芸の道はこれ鍛錬。継続が大切じゃ。

清正さん

わしだって軽くしたい。だが、わしがこうしていれば家臣も見習い、常に戦時の備えを怠らないだろう。

誇りを持ち、精神を鍛え、自らを研鑽する武道。普段からの心がけひとつで、結果が異なってくるのは武道も武士道も同じ。居合は、誰のためでもなく、自分と向き合う武道ですが、松永哲典さんは、自己研鑽と同時に、「二天一流」の発展。そして、街の発展を願い。この両輪を、謙虚ながら静かに燃える熱い思いを原動力に、一歩一歩を確実に回し、歩んでいるのです。

松永哲典さんがオススメする、
近所のラストサムライ

リーガルシューズ 前原孝志郎

靴の販売にとどまらず、下通繁栄会でも長年活躍されており、中心商店街のことにも精通され積極的に活動されています。

TEL:096-325-9313
住所:熊本市中央区下通1-6-1マエハラビル2F
営業時間:10:30~19:30
休み:木曜
席数:なし
駐車場:なし

武蔵館道場

お問合せ/090-6429-4373
営業時間/12:00 14:00 16:00 18:00
(月・木・土曜、予約制)
定休日/火・水・金・日曜
住所/熊本市中央区下通1-6-4
武蔵ビル3階
アクセス/熊本市電A系統
通町筋駅徒歩5分