居合を街なかで指導する剣豪・宮本武蔵に縁がある令和のサムライ!?
熊本城近く、上通・下通アーケードを中心とした中心市街地を「街」と呼ぶのは、熊本七不思議のひとつ(たぶん)。そして、その街のなかを、「街なか」と呼びます。これ覚えておくと、熊本人と仲良くなれるはずです(…たぶん)。
早速ですが、武蔵小路にある「武蔵ビル」に居合の道場があるという情報をキャッチし、お邪魔してみる事に。街なかに道場があるなんて、想像もつきません。ましてや「居合」って…ん?居合、居合、……居合って、何だろう…分からない。しまった、事前リサーチする時間がない! 武道だよね、「知らない」なんて言ったら投げ飛ばされるのかもしれないな。
それは柔道だろう…。むしろ、投げ飛ばされてこい。
第一ヒント発見!
1階ロビーでチラシを発見。刀を持っている様子からすると、剣道や殺陣のようなものでしょうか。実は私、剣道経験者なんです。ふっふっふっふ。少し自信がついてきたぞ。(ヒントが第一でおわってるのは、お気になさらず)
し、失礼します……
街なかで居合を教える、ラストサムライに会いに来たんですけど…
ようこそ、お待ちしていましたよ。
えっ? 若い、かっこいい! あっ、着物着てる。なんか武道っぽいぞ。えっと、……は、は、はじめまして。(少々、拍子抜けで、逆に戸惑う)
だ、大丈夫ですか?
すみません! 実は「居合」のことを良く知らないまま来てしまって、どうしようと思っていたところ、松永さんがかっこ良すぎて、パニックになって…。
だから、落ち着かんか。
そんなにビビらないでください。詳しく知らない方は多いですよ。合気道と勘違いされたり、戦う武道だと思われたり…。居合は、刀を使って「己」を磨く武道です。人と対戦したり、勝ち負けを競うということはないので、言い方は悪いですが、派手で分かりやすさのある武道とは違い、地味な武道になります。
ご自分で地味って言った。
分かりやすく言ってくれておるのじゃ。こやつ、気遣いが出来るな。
「相手と戦う、相手を負かす」ではなく、向き合うのは自分。そこを突き詰めていく武道になります。だからこそ、鍛錬しながら形を磨いていく。そういう世界です。そうですね、もっと極端に言うと、人から評価されなくてもいいんです。客観的に見ることができない、自分という存在と向き合うことがこの武道の本質なんです。
さらっとおっしゃるけど、深い…。
30代の私は、この世界では初心者も同然。60代で若造ですからね。
自分と向き合う…精神論の世界っぽいな。私は自分と向き合いきれず、この部屋に飾ってあるアレとか、コレとかが、さっきから気になって仕方ないのです。
そのアレが、コレ!
教科書とかで見た事ある、あの人ですよね?
ええ、剣豪・宮本武蔵です。細川忠利公が熊本に招き、有名な「五輪書」が完成したと言われています。
武道を志す人は、やっぱり憧れる存在なんですね。(アイドルのポスターを貼るようなものかな♪)
元をたどれば、師ですね。宮本武蔵が確立した「二天一流」を、曾祖父の時代から松永家が継承しているので。
また、そんなにさらっと。…ええー!スゴい事じゃないですか!
独特の空気感を持つ若者じゃな。
系譜を見ながらご説明すると、最初に宮本武蔵の名があって、辿っていくと、これが私です。
宮本武蔵から始まり…
先端が、第18代・松永哲典さん!
宮本武蔵の「二天一流」という、多分みなさんもご存知の、二刀流の形です。曾祖父・松永展幸が、第15代宗家として、後進を指導し、全日本居合道連盟に大きく貢献したと聞いています。
江戸時代の剣豪・宮本武蔵と、
令和のラストサムライ・
松永哲典さんの共演!
やっぱりかっこいい! 分かった! 松永さんの写真をカレンダーにして売り出しましょう。そしたら、もっと沢山の人に広がりますよ!
恥ずかしいのでいいです(笑)。
意外と照れ屋だ。
見よ! 第17代目・松永和典さん!
おお、凛々しい。わしの家臣にしたいぞ。
時代違うからな〜。残念!
街で生きてきたからこそ
街に恩返しがしたい。
それが町づくりの原動力
二刀流の継承者として、松永さん自身も後進の指導や、イベントでの演舞など周知活動を行っています。一方、街なかで暮らしてきたからこそ、この中心市街地は庭のようなもの。大型ショッピングモールが次々とオープンし、街は昔ほどの活気がなくなって来ているのが、正直なところ…。松永さんも、その危機感を感じていたと言います。さらに追い打ちのように起きた熊本地震。観光客も激減し、閑散としたアーケードを見ると、涙が出そうになり、仲間たちと「どうにかしないと…」という気持ちになったのです。そんな折、支援の呼びかけをもらい、松永さんを突き動かす両輪のひとつ「町づくり」の活動が本格的にスタートします。
私が…というより、仲間と一緒にです。人前に立つ事とか、話す事とか苦手なので、先輩をはじめ、同年代の仲間など、みんなに支えられながらやっています。
それが、「くまもと・まち魅力向上協議会」の事なんですね。会長をされていますもんね。
…鍛錬です。
しゅ、修業かっ(笑)。今入ってきたタレコミ情報によると、街の商店の先輩方に、相当かわいがられているようですね。夜の街でのノミュニケーションなども盛んなようで。学校生活ではなく、こうやって大人になって出来たつながりって、とても大事ですね。
なんとでん言われてそうですね(笑)。はい、もともと「街を盛り上げたい」と活動している先輩方がいらっしゃったので、最初はそのお手伝いをしていたんです。支援のお話をいただいたことをキッカケに協議会が立ち上がり、私たち若手が中心でやることを、逆に先輩方がサポートしてくれて。会長という肩書きですが、表に立って牽引するというより、みんなの間に入って、アイデアやコミュニケーションを繋げている役割だと思っています。
令和の時代も、こういったものたちがいるから安心じゃな。
居合の世界を体験!
剣道経験者・下田の成果は!?
まずは、第18代・松永哲典さんによる
演舞をご覧ください(アナウンス風…)
静まる道場…
スッ
ヒュウ…
シーーーーン。
掛け声はなく、聞こえてくるのは。衣摺れと刀を振る音だけ。刀を振るたびに「ヒュウ」という音が、しんと静まる道場に響きます。(あ〜緊張した!)
さ、次は下田さんの番ですよ
っ!?
不安…不安しかない…
これは真剣。ガチなやつです
ズボンのベルトに刀を差して…
(結構、ずっしりします)
刀を鞘(さや)から抜く、ん…抜く。
抜けない〜〜〜〜
初めての方はだいたい抜けないもんです。体のつくり、腰の動かし方、刀の特性などを考えて、こんな感じで…
今度は体の動きを意識して見てみてください。
こんな感じです。
スゴいー!
パチパチパチ!!!!!!!!
いやぁ〜照れますね(笑)
はい、やってみましょうか
あ、そうだった…
体のつくりを意識して、腰を開いて…
とりゃ〜! どうにか抜けた〜!!
体、心と向き合いながら自己を研ぎ澄ます…
邪念ばかりじゃな…。
(気にしていない様子で…)刀を振るときは、剣先の位置、軌道を見ます。静止の構えから刀を動かし、どこで止めるかという動作ですね。もちろんそこには、精神性も大変重要です。
武芸の道はこれ鍛錬。継続が大切じゃ。
わしだって軽くしたい。だが、わしがこうしていれば家臣も見習い、常に戦時の備えを怠らないだろう。
誇りを持ち、精神を鍛え、自らを研鑽する武道。普段からの心がけひとつで、結果が異なってくるのは武道も武士道も同じ。居合は、誰のためでもなく、自分と向き合う武道ですが、松永哲典さんは、自己研鑽と同時に、「二天一流」の発展。そして、街の発展を願い。この両輪を、謙虚ながら静かに燃える熱い思いを原動力に、一歩一歩を確実に回し、歩んでいるのです。
松永哲典さんがオススメする、
近所のラストサムライ
- リーガルシューズ 前原孝志郎
-
靴の販売にとどまらず、下通繁栄会でも長年活躍されており、中心商店街のことにも精通され積極的に活動されています。
TEL:096-325-9313
住所:熊本市中央区下通1-6-1マエハラビル2F
営業時間:10:30~19:30
休み:木曜
席数:なし
駐車場:なし
武蔵館道場
お問合せ/090-6429-4373
営業時間/12:00 14:00 16:00 18:00
(月・木・土曜、予約制)
定休日/火・水・金・日曜
住所/熊本市中央区下通1-6-4
武蔵ビル3階
アクセス/熊本市電A系統
通町筋駅徒歩5分
熊本と愛知を行き来し、昼はライター、夜はDJと、私も立派な二刀流!(無理矢理、笑)な下田宣代です。指令を聞いただけで、なんだかスゴそうな人なんで、いつものノリでいいのか、お利口さんで行った方がいいのか、悩みながらも……ああ、考えてもしょうがない! いってきます!(どうとでもなれ〜)