黄金色のおいしい健康食があると聞いたぞ。まさに「一石二鳥」ではないか!その正体を調べてまいれ。

ライター・今村

こんにちは。熊本で生まれ育って40年。熊本が好きすぎて、熊本の魅力を発信し続ける仕事をに就いて15年のライター・今村ゆきこ です。「黄金色のおいしい健康食」……あ~、あれですね。熊本で暮らす人なら知らない人はいない「あれ」について調べて来ま~す!

延べ棒!? 黄金色に輝く「おいしい健康食」!
お殿様が独り占めしていた「あれ」の正体はいかに!

店頭に積まれた、金色の「あれ」…
ライター・今村

最初にバラしちゃいます。

清正さん

えっ!? 早くないか!

ライター・今村

(ツッコミを無視して…)清正さんの時代の後だから知らないかもしれませんが、現代の人にもったいぶっても仕方ないでしょう。

清正さん

……ヒドイ(涙)

ライター・今村

金色の「あれ」の正体は「からし蓮根」と呼ばれる熊本の郷土料理です。そのからし蓮根を最初に作ったのが、熊本市中央区新町にある「森からし蓮根」さん。本物の「元祖」です。

これが、熊本名物「からし蓮根」です
ライター・今村

熊本では、総菜屋さん、居酒屋さん、お土産屋さん、スーパー…と、いろんなお店でからし蓮根を売っています。熊本で生まれ育って40年。食卓に母親手作りのからし蓮根が並ぶほど、自称「からし蓮根ラバー」な一家で育った今村ですが、実は、元祖は食べたことありませんでした…(それだけからし蓮根がいっぱいあるんです)。本当にすみません!(心から謝罪!)

こちらが「森からし蓮根」。誰が何と言おうと、元祖です!
ライター・今村

「元祖」だし、「400年以上も続く老舗」ということで、少々緊張してお邪魔する、実は小心者の私…。「おはようございます~」と声をかけると、ドドーンと一番偉そうな人が登場! ビクビクしながら名刺交換をして、インタビュー開始です。

もくもくと作業を進めるスタッフ&名刺交換後、笑顔で対応してくれた副社長の森久一郎さん(ほっ。)
福社長:森さん

からし蓮根は、体が弱かった熊本藩・初代藩主の細川忠利公の為に、当時、藩の賄い方をしていた先祖・平五郎が作った健康食品です。蓮根の穴に和からしを混ぜた麦味噌を詰め、衣をつけて菜種油で揚げたもので、忠利公は大変気に入られ、みるみる元気になられたと伝え聞いています。

ライター・今村

嘘のような本当の話! 郷土料理は体のことをよく考えられたメニューだと聞きますが、お殿様が元気になるって言うのは、かなりインパクト大ですね! 庶民はなかなか食べられなかったんですか?

福社長:森さん

「なかなか」どころか、明治時代まで門外不出だったんです。完成したのは、1632年・江戸時代。ドラマなどで庶民の食卓には、鍋がひとつぶら下がっていて、それを食べているシーンがありますよね? それから考えても、油って相当高価なものだと考えられるので、「特別なもの」だったと思いますよ。

ライター・今村

ひえ~! 今では、熊本の郷土料理=からし蓮根ってくらい馴染みがあるのに、門外不出だったとは…。恐るべし忠利公。

清正さん

わしの時代にあったら、同じく独り占めしておったかもしれんな。

ライター・今村

いや、清正さん、健康そうですけど。

福社長:森さん

あるドラマで、「肥後の国からのお土産です~」ってからし蓮根が届いたシーンがあったので、その頃から、熊本のお土産として藩主たちの間ではやりとりされていたようです。

ライター・今村

もしや、熊本土産の元祖!?

店頭に飾られた「からし蓮根の由来」の書
これを見れば、なぜ「おいしい健康食」と言っていたか分かります。ん?コレステロール予防!(もちろん、購入して帰りました)
福社長:森さん

ちなみに、土に埋まったものを食べるのは、お殿様としてプライドが許さなかったので、衣で包んで隠した…と言われています。名前に「蓮根」ってあるんですけどね(笑)

ライター・今村

それ、当時突っ込んでたら命なかったな…。

清正さん

うん、知らんで良いこともある。

2階にはお殿様からの贈り物が
熊本藩の「九曜の紋」が入った食器たち。熊本地震でずいぶんダメになってしまったようです(涙)

お殿様に感謝されまくった平五郎さんは、苗字帯刀を受け、森家の歴史が始まります。現在の当主は18代目。1632年にからし蓮根ができて約400年。歴史の重さを感じます。

約400年の歴史は受け継ぐものに、一切の妥協を許さない!

福社長:森さん

看板の重さはとても感じています。これまで、新しい味を…と考えて、マヨネーズを入れてみたり、明太子を入れてみたり、辛さを調整したり、いろいろと試してみました。が、どれも失敗。マヨネーズなんて、フライヤーの油を交換しなきゃいけないほど大変なことに…。先代にバレないように、コソコソ掃除して、「油変えといたよ~」なんて言ってごまかしていました(笑)。

からし蓮根物語は、話はまだまだ続く…だって約400年分だもん
ライター・今村

では、レシピは当初のままですか?

福社長:森さん

レシピはないんです。これまで、誰も教えてくれないので、見て覚えるのがうちのやり方。例えば、蓮根は年中使うので、全国各地から取り寄せます。産地によって、季節によって、ゆで時間を変えているので、コレが何分という決まりはありません。素材を見て、見極めないといけません。

1日2~3千本、繁忙期は1日2~3万本!
ゆで上がったら一気に上げます。誤差は1分以内にしないと食感などにバラつきが出てくるそう
ライター・今村

伝統の味を守る姿は、かっこいいですね! 製造は男性の仕事なんですか?

福社長:森さん

力仕事なので、男性ばかりです。これから、からし味噌を詰め始めますよ。

いざ、からし味噌を詰める作業へ!

からし味噌を詰めているのが、森さんの息子さん
片手で、ギュッギュ
穴から味噌がうにょ! うにょ、うにょ!
はみ出た味噌を、すっ!
10分ほどで、こんなに!
福社長:森さん

味噌と蓮根をなじませるために、ひと晩置きます。

ライター・今村

えっ! すぐに揚げないんですか!

福社長:森さん

おいしいからし蓮根のために、我慢です。

~ 一夜明けて ~

※編集の都合上、前日に詰めたものを揚げています(笑)

続いて、うこんを混ぜた衣につけて揚げます! 

衣のつけ方が、かっこいい!
では……

イチっ!

ニッ!

サーンッ!

あっ、画面から外れた(笑) 左手は、次の蓮根に手を伸ばしています
その日、その素材に合わせて時間を変えて揚げていきます

熱々をいただきま~す!
と思いきや、この後、「冷やし」へ。

福社長:森さん

完全にあら熱を取り除かないと、日持ちしません。保存料を一切使っていないので、昔からの方法で日持ちのするからし蓮根を作ることが大切なんです。

福社長:森さん

こうやって毎日、同じ事を繰り返します。同じ味を提供し続ける事が、私たちの使命。昔は、先代からこの話を聞いても、新しいものを作りたいと考えていましたが、メインで携わるようになって、その気持ちが分かったんです。守って、次の世代へ引き継いでいくことが、どれだけ大変なことかということを…。

ライター・今村

400年近く、森さんたちが同じ味を届け続けてくれたおかげで、揺るぎない「熊本の味」が守られているんですね(泣きそう…)

清正さん

うむ。時代が変わっても変わらないものがあることは、ありがたいことじゃな。

老舗からし蓮根屋に生まれた宿命。「当然、からし蓮根屋になるもんだと思っていたよ。あれは、洗脳だね(笑)」

「洗脳だよ~」って、めっちゃ笑顔

じわっと来たところで、森さんがなぜ店を継ごうと決意したか?を尋ねてみることに。老舗からし蓮根屋に生まれた森さん。当然ながら、物心ついた頃から、毎日からし蓮根がそばにありました。食卓にからし蓮根が並ぶのは日常の風景。幼い森さんは、からし味噌を取り除いて食べていたそうです。あっ、これ、熊本人・幼少期あるあるです。衣が甘くて、蓮根のシャキシャキ感が美味しいから、味噌を取ってでも食べる…。残された味噌は悲惨なものでした(笑)。

福社長:森さん

祖父母から、「あんたは将来、この店ば継ぐとよ」と言われ続けて、疑うことなく、からし蓮根屋になると思っていました。でも、専門学校を卒業して4~5年は、旅が好きだったので旅行の添乗員をしていたんです。今でもバスガイドさん並みに話せますよ。

ライター・今村

どうりでお話がうまいんですね! お邪魔して2時間近く経ってますが、話が尽きない!引き込まれる!

福社長:森さん

24歳頃に店に入って今に至ります。最近は、1年の3割は出稼ぎ部隊。行商で全国を回っています。

ライター・今村

今も旅しているんですね!

福社長:森さん

まだまだ、からし蓮根を知らない人がいるので、広める意味でも全国へ出かけていきたいと思っています。特に東北には、知らない人が多い。私たちがよその土地の名物を知っているかって言われたら微妙ですよね。それと同じです。

ライター・今村

まさに「からし蓮根大使」! 各地を巡っていると、いろんな事が起きるでしょう~。

福社長:森さん

あ~、関西の物産展が面白かったですね。THE大阪のおばちゃんが来て試食するけど、めちゃくちゃ怒るんです。「こんな辛いの、よう食わんわ~」って。じゃあ食べなきゃいいのに、って心の中でツッコンでました。2日目も来て、また試食して怒って帰って…。3日目も試食するんですが、今度は「これクセになるわ~」って買ってくれて(笑)。期間中の7日間毎日来て、最後の4日は1日1本買ってくれるし、周りの人に薦めてくれるし、面白いな~って思いました。からし蓮根って「辛い」のが特徴なので、記憶に残るんですよね。それがクセになっていく。「また来るときは連絡してね~」って言われたけど、連絡先知らんし(笑)。

「うち、すごい人が来たよ!かっこ良かった!!」

歴史の話からちょっと脱線して、自慢話を始める森さん。その自慢がスゴかった!

それがコレ! サイン色紙の数々!
ほんの一部らしいです。

福社長:森さん

全部貼ったらラーメン屋になっちゃうからね。一部飾らせてもらってます。

ライター・今村

(片付けられてる人、かわいそう…言わないけど、笑)

福社長:森さん

コレ、誰だか分かりますか? 

ライター・今村

え? 

え?え?え~~???

ライター・今村

嘘でしょう! 昭和を代表するスターのサインがある! 会ったんですか?

福社長:森さん

まだ中学生くらいだったんですが、居るときにたまたまいらっしゃって。最初、ベンツが店の前に横づけして、ちょっとだけ開いた窓から、マネージャーか誰かに「あれとあれ…」みたいな感じで指示しているんです。でも、うちのスタッフが気づいて、「美空ひばりさんですよね!」って言ったら出てきてくれて! サインをお願いしたら、快く書いてくださいましたよ。かっこよかった~。

清正さん

大興奮じゃな。わしのサインも混ぜとこうか。

ライター・今村

(いや、無理でしょう…。)ビッグスター(古い…)が立ち寄る店 なんて、スゴすぎるじゃないですか! ほかにも、めちゃくちゃスゴい人が来てるじゃないですか! わー!! 

誰のサインがあるかって? それは、来た人だけの楽しみってことで、誰のサインがあるかはこれ以上はやめときます。

やっと食べられる~!!!!
忠利さん、体弱くてありがとう!(←失礼…)
おかげさまで、こんなおいしい郷土料理が生まれたよ~!

献上品っぽく撮影したからし蓮根。賞味期限は10日です
からし蓮根大好きなんです~
シャクッ!

ん~!これこれ!
辛い~!!!

衣と蓮根の甘みが来て、ツーンとからしの辛味が!

専用の醤油があるらしい!

森のお醤油 599円
福社長:森さん

うちは「からし蓮根」に関する商品しか作りません。熊本の甘い醤油を知ってもらうために開発したんです。よく合いますよ。

恐る恐る、ちょんちょんつけます。

ちょっと辛味が落ち着いて、まろやかに!
辛いのが苦手な人は、マヨネーズをつけて食べると、さらにまろやかに!!

この薄さ(5~8mm)がポイント。厚いと辛さが強くて、悶絶必至です!!!チャレンジしたい人はやってみて、こちらへ投稿を(ってどこに、笑)

これも発見!
森からし蓮根風味チップス

試行錯誤の上に完成したそう!
「これもかなりこだわったよ~」ドヤ顔、再び!

ドキドキ。

ガシャガシャ(早く食べたくて、雑になってきてます)

ジャーーン!

カメラ目線でパクリ!
「風味」だもんね。そんなに辛くないでしょう……

うわ!

すぐ辛い!「ビール~!」と叫ぶ今村
ライター・今村

そうだ、森さんも食べてみてくださいよ。

福社長:森さん

私は食べ慣れてるから……。

ぐはぁっ!

かっらぁ~!

こんなことさせてますが、熊本の味を守るスゴい人。
「もう、俺の写真はいいよ~」と逃げようとする森さんをつかまえて、
看板娘のみなさんと一緒に、記念撮影
清正さん

およそ下の者は上の者を学ぶ。大将がくつろげば、下は大いに怠けるものなので、いつも陣法を厳しくすることだ。

次期当主として、先祖から受け継がれてきた熊本の味を、先代の背中から学び守り続ける森久一郎さん。そして、その意思を継ぐ次なるサムライが現れ、また次の世代へ受け継いでいく……。「熊本の味・からし蓮根」が、永遠に受け継がれていく事を願っています。

(取材・文・撮影/今村ゆきこ)

森 久一郎さんがオススメする、
近所のラストサムライ

八百柿

昭和18年から続く八百屋。野菜ソムリエ&バーベキューインストラクターの知識を活かして提供する野菜は多くのファンがいます。

TEL:096-352-3998
住所:熊本市中央区新町4丁目1-20
営業時間:9:00~19:00
休み:日曜・祝日
席数:なし
駐車場:なし

松石パン

明治21年創業。1904年からパンを販売し続けがんばっていらっしゃるので。

TEL:096-354-1255
住所:熊本市中央区新町4丁目2-13
営業時間:7:00~20:00
休み:年末年始
席数:なし
駐車場:10台

森からし蓮根 本店

お問合せ/096-351-0001
営業時間/8:00~17:00
定休日/なし
住所/熊本市中央区新町2-12-32
アクセス/熊本市電 新町電停徒歩1分